
「白髪染め」と「おしゃれ染め」は、店頭で見ると「別物」として売っていますが、一体どこが違うのでしょうか?
その違いを、ヘアカラーの仕組みを交えてわかりやすく解説します。
Contents
1 ヘアカラーの仕組み= “脱色+発色”
ヘアカラーは、「脱色」作用と「発色」作用の2つが組み合わさって得られる効果です。
この章ではカラー剤の化学反応により起こる作用を図解していきます。
1-1 ビフォア状態
ヘアカラーをする前の状態です。
1-2 プロセス①:脱色作用
毛髪内にもともと存在する「メラニン色素」を分解します。分解する量が多いほど、髪は明るくなっていきます。
脱色作用は薬剤を混ぜ合わせた(1剤と2剤)直後から15分くらいまで活発に作用します。それ以降は急速に働きを弱めます。
※白髪にはメラニン色素は存在しません。メラニン色素は毛根内部のメラノサイトで作られていますが、なんらかの原因でメラノサイトの働きが弱まることで毛髪にメラニン色素が含まれない白髪となります。
1-3 プロセス②:発色作用
薬剤を混ぜ合わせてから10分を過ぎ、脱色作用が弱まりだすのと入れ替わりに、発色作用が始まります。
配合された“染料(微細で目に見えない)”が、毛髪内部で化学反応を起こすことで目に見える色味として“発色”し、毛髪に定着します。
発色作用は薬剤を混ぜ合わせてから10分後~30分くらいの間で完了します。
1剤と2剤を混ぜ合わせた瞬間から化学反応が始まり、30分くらいで反応が完了します。この30分のうち前半15分が脱色作用、後半15分で発色作用が起こるというわけです。
このことから、ヘアカラーを狙い通りに仕上げるには“薬剤を混ぜ合わせたら手早く髪へ塗布し、しっかりと時間を置く”ことが大切とわかりますね!
2 白髪染めとおしゃれ染めの違い
白髪染め、おしゃれ染めのどちらも、この「脱色+発色」作用により髪を染めています。白髪染めもおしゃれ染めも、この2つの作用において違いはありません。
では、どこが違うのでしょうか?その答えは発色作用における「彩度が違う」という点です。
2-1 彩度とは
彩度とは色の鮮やかさを測る尺度です。
下の図で見て横軸に、彩度が高いほど鮮やかな色味となります。逆に低くなるほど色味はくすんでいきます。
つまり、“彩度=色鮮やかさの度合い”ということ。この違いが「白髪染め」と「おしゃれ染め」を分けるポイントになります。
2-2 白髪染めの彩度
白髪染めの彩度は、彩度表で見て左半分の低彩度~中彩度ゾーン。
ビビットさが抑えられ、落ち着いたナチュラルな印象の色味です。この色味が白髪に入ることで、均一な色味(黒髪だった髪とのコントラストを消す)になります。
また、彩度が低くなるほど白髪のカバー力は上がっていきますが、相対的に色味は失われてしまいます。
2-3 おしゃれ染めの彩度
おしゃれ染めの彩度は、彩度表で見ておおよそ右半分の高彩度ゾーン。
色鮮やかでくっきり、ビビットな発色が特徴です。
ただし、鮮やかな色を髪に発色させるためには、もともとの髪の明度を上げる必要があります。どれだけ鮮やかな色でも、発色する下地となる髪色が暗いままでは色味がわからないからです。
2-4 白髪染めは明度に上限がある
おしゃれ染めの場合は明度に上限はありませんが、白髪染めは一定以下の明るさである必要があります。
あまり高明度だと白髪を染めるに十分な色素量を確保できないからです。
3 なぜ白髪染めは低~中彩度でないと染まらないのか?
3-1 ビフォア状態(新生毛・黒白)
新生毛が伸びてきた状態です。黒髪と白髪が混じり合っています。白黒のコントラストが強く、白髪が目立ちます。
3-2 プロセス➀:脱色作用
薬剤の化学反応により、まず脱色作用が起きます。一定の明度までメラニン色素が分解されます。白髪はメラニン色素を含まないので黒髪のみ脱色され、白髪の色は変化しません。
ビフォア状態と比べると、黒髪部分の明度が上がった分だけコントラストがマイルドになっていますが、白髪は目立ったままです。
3-3 プロセス②:発色作用
左サイド:白髪染め(低彩度) 右サイド:おしゃれ染め(高彩度)
いかがでしょうか?おしゃれ染めの方が、白髪が浮いて見えますね。
おしゃれ染め(高彩度)は下地が白髪の部分に対しては色鮮やかに発色してしまうため、コントラストが強く残ってしまいます。そうすると白髪は浮いて見え、「染まっていない」と感じます。
白髪染め(低彩度)ではくすんだ色味が白髪と黒髪のコントラストをぼかして均一な色味になり、「しっかり染まった」と感じます。
4 市販品とサロンカラーの違い
4-1 市販の白髪染め
出典:https://pixta.jp/
市販の白髪染めは誰が使っても白髪がしっかり染まるよう、低彩度の色味に設定されています。
しっかりと染まる反面、くすみが強いため色鮮やかさはあまり感じられません。また、染まりづらい白髪にも作用するよう、アルカリ剤も強めの配合となっています。
4-2 サロンでの白髪染め
出典:https://pixta.jp/
サロンではひとりひとりの髪質に適した“彩度調整”をしてもらえるので、色味を感じられる彩度の高い白髪染めが可能です!
また、新生毛部分と既染毛部分など、コンディションの違いに応じて薬剤の強さも使い分けるので髪への負担も最小限に抑えられます。
白髪染めは1~2ヶ月くらいの間隔でリピート施術するので、繰り返すほどにこの違いは顕著になります。
5 まとめ
いかがでしたか?
「白髪染め」と「おしゃれ染め」は“彩度”と“明度”という点では違いがあると言えますが、グラデーション状に地続きのなかでの棲み分けになっており、その境界線は曖昧です。
特に最近はおしゃれ染めの延長線上での白髪染めニーズが高まっていますが、色味を感じられる彩度が高めの白髪染めをする場合にはサロンで施術を受けるのがおすすめです。