
髪を染めるというと普通のヘアカラーと白髪染めがありますが、どのような違いがあるかご存知ですか?結論から言うと、どちらも染めるメカニズムや成分は同じです。
ではなぜ、普通のヘアカラーと白髪染めと分けられているのか、白髪に普通のヘアカラーを使ってはダメなのか気になりますよね。
今回はそんな疑問について詳しく説明していきます。また、ヘアカラー以外の「ヘアマニキュア」や「ヘアカラートリートメント」などの仕組みについても紹介します。
自分の髪にはどれが合っていてどれを使うのがベストなのか、選ぶ際の参考にしてみてください。
◆ 最終更新日:2018年1月31日
Contents
1 普通のヘアカラーも白髪染めも同じ分類
出典:PIXTA
薬機法(旧薬事法)によると、髪を染めるアイテムは大きく分けると次の2つに分類されます。
医薬部外品に分類される「染毛剤」と、化粧品に分類される「染毛料」です。
一文字違いですが、配合される成分が大きく違うので、染まり具合はもちろん、人体への影響も異なってきます。
そして、いわゆる普通のヘアカラーや白髪染めはこの染毛剤の分類となり、全てヘアカラーになります。一般的には、黒髪を染めるものをおしゃれ染めやファッションカラーと呼び、白髪を染めるものを白髪染めやグレイカラーと呼んでいるのです。
2 白髪染めやおしゃれ染めを含む染毛剤(医薬部外品)とは
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染毛剤は医薬部外品なので、効果・効能に有効な成分が一定の濃度で配合されています。またその反面、人体への影響(かぶれやアレルギーなど)も少なからず出る可能性があるので、商品のパッケージには医薬部外品という旨を明記する義務があります。
つまり、染毛剤であるヘアカラーや白髪染めは、即効性があり、よく染まるけれどもかぶれやアレルギーが起こることもありうるということです。
ちなみに、脱色するヘアブリーチもヘアカラーや白髪染めと同じく染毛剤の分類になります。
2-1 白髪染めやおしゃれ染めのヘアカラーに含まれる成分
染毛剤には、主に以下の成分が配合されています。
・アルカリ剤・・・髪のキューティクルを開かせ、色の成分が髪の内部へ染み込むよう作用する。
・過酸化水素水・・・メラニン色素を分解して髪を脱色させる。
・染料・・・髪を染色する。代表的なものにジアミンがある。
これらの成分は髪が染まる効果が高い反面、人によってはかぶれやダメージ、アレルギーを引き起こす原因となる可能性もあります。
2-2 白髪染めやおしゃれ染めのヘアカラーによる染毛の仕組み
①染毛剤は髪に塗布する直前に、色素中心の1剤(染料とアルカリ剤)と脱色効果のある2剤(過酸化水素水)を混ぜて髪に塗布していくものがほとんどです。※まれに3剤を混ぜるタイプもあります。
出典:PIXTA
このとき、過酸化水素水と混ぜたことで染料が酸化重合されてくっつき、どんどん大きくなります。
大きくなり過ぎると開いたキューティクルから内部に入らなくなるので、1剤と2剤を混ぜたらなるべく早めに塗布するのが、しっかり染料を髪の内部に浸透させるコツです。
②混ぜ合わせた染毛剤を髪に塗布すると、アルカリ剤により毛髪が膨張し、キューティクルが開いていきます。その開いたキューティクルの間から染料が毛髪の内部へ浸透していきます。
【染毛剤塗布前の毛髪】
⇓
【染毛剤塗布後の毛髪】
③髪のメラニンが過酸化水素水により脱色され、さらに酸化重合された染料により発色し、染毛します。
【メラニンの脱色と染毛】
出典:メロスコスメティックス
2-3 白髪染めやおしゃれ染めのヘアカラーのメリット・デメリット
2-3-1 メリット
・髪の内部にまで浸透して発色するため、1回の使用で濃く染まります。
・キューティクルから浸透した酸化重合された染料は、髪の内部に入ってからもどんどん大きくなり、外に出にくくなります。すなわち、内部から脱着しにくくなるので色持ちが良くなります。
2-3-2 デメリット
・キューティクルを無理矢理開かせたり、脱色させたり、毛髪内部で染料を反応させて染めるので、少なからず髪にダメージを与えます。
・配合されている染料をはじめ、アルカリ剤や過酸化水素水などが原因で、アレルギー反応やかぶれなどを起こす可能性があります。
3 同じヘアカラーのおしゃれ染めと白髪染めの違い
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それでは、同じ染毛剤のヘアカラーであるおしゃれ染めと白髪染めには、どこに違いがあるのでしょうか。
配合されている成分や髪を染める仕組みは基本的には同じです。違うのは、その脱色力と染毛力のバランスや染料の成分にあるのです。
おしゃれ染めは基本的に黒髪に使用します。黒髪はメラニン色素があるので、明るい色にするにはメラニン色素を抜かなくてはなりません。ですから、明るい色にするほど脱色力が高くなっていきます。
一方、白髪染めはもともとメラニン色素がない白髪とメラニン色素がある黒髪の両方を染める必要があります。
ですから、どちらの髪も染まる染毛力の高い成分を使用しており、また白髪染めの染毛力は濃い色が多いので、おしゃれ染めに比べて時間が経っても色が抜けづらいという特徴もあります。
白髪染めの脱色力は、明るい仕上がりは高め、暗い仕上がりは低めになるように配合されていますが、おしゃれ染めに比べると脱色力は低い配合になっています。
4 白髪染めとおしゃれ染めのダメージの違い
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どちらも最初にキューティクルを開かせて髪の内部に浸透し、さらに酸化重合して着色させるというメカニズムなので、必ず髪にダメージを与えることには変わりないということを頭に入れておいてください。その上で、強いて言うならどちらがダメージが少ないかという観点でお話します。
髪にダメージを与える最も大きなものは脱色力になります。もともと色素のない白髪は脱色する必要がないので白髪染めは脱色力が低くなっています。
一方、おしゃれ染めは黒髪の色素を脱色して明るい色を着色させるため、脱色力が高くなっています。ですから、おしゃれ染めの方が髪へのダメージは大きくなり、髪も傷んでしまうと言えるでしょう。
ただし、おしゃれ染めでもそこまで明るくない色であれば脱色力は低めですし、白髪染めでも明るい色にする場合は脱色力が高くなっているので、仕上がりの色によっては白髪染めの方がダメージが高くなることもあります。
どちらもダメージを与えることには変わりないので、髪を傷めたくない人はヘアカラーを避けることが最善の対策です。
5 美容室と市販のヘアカラー(染毛剤)の違い
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白髪染めやおしゃれ染めのヘアカラー(染毛剤)も、美容室で使われているプロ用とドラッグストアなどで販売されている市販のものとでは、色数や配合される成分の多少が違います。
プロ向けの染毛剤は色数が豊富で髪に優しい成分が多く含まれています。それを、プロである美容師が、お客様一人ひとりの髪の状態を見極めてその人に合った配合をしてくれます。
一方で、一般向けの染毛剤は価格を重視するため、髪に優しい成分が少ないというのが特徴です。さらに、全ての髪に対して染まるようになっているので、人によっては脱色力が強すぎたり染毛力が強すぎたりすることもあります。
髪のことを考えるのであれば、価格は高くても美容室でヘアカラーしてもらう方がダメージは少なくて済みます。
6 白髪染めとおしゃれ染めとどちらを使えばいいのか
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いつから白髪染めを使えばいいのか、おしゃれ染めでは白髪を染められないのかという疑問がわいてくると思います。
これは、白髪の量や仕上げたい髪の明るさで使うヘアカラー剤をおしゃれ染めにするか白髪染めにするか決まってきます。
6-1 おしゃれ染めを使うケース
6-1-1 白髪が少量の場合
まだ白髪がちらほら数えるぐらいの量であれば、おしゃれ染めでも問題ないでしょう。ただし、仕上がりを明るい髪色にすると白髪がキラキラと目立ってしまいます。おしゃれ染めの明るい染料では白髪がしっかり染まらないからです。
気になる白髪を見つけたら抜くことは避け、根元からはさみで切ってあげてください。
6-1-2 仕上がりを暗めの髪色にする場合
暗めの髪色であれば、おしゃれ染めでも白髪がある程度着色して目立たなくなります。脱色力も弱めですから、髪のダメージを考えてもおしゃれ染めを選択するのが賢明でしょう。
6-1-3 ハイライトを活かす場合
おしゃれ染めで、ハイライトを入れることで白髪を紛らわすこともできます。これなら白髪も目立たず、おしゃれ染めだけでOKです。
6-2 白髪染めを使うケース
6-2-1 白髪が多くなった場合
パッと見ても白髪が目立つくらいの量になったら、白髪染めを使用した方が良いでしょう。
基本的におしゃれ染めは黒髪を染めるためのもので、白髪をしっかり染めるほどの染毛力はありません。ですから、おしゃれ染めでは白髪部分がしっかり染まらず、結局目立ってしまうことになります。
6-2-2 部分的に白髪染めを使う場合
白髪が少なめであれば、おしゃれ染めをしている髪の気になった白髪にだけ、リタッチで白髪染めを使うこともできます。
6-2-3 明るい白髪染めを使う
昔は白髪染めというと黒やダークブラウンなど暗めの髪色に仕上げるイメージでしたが、最近では、白髪染めでも明るめのトーンに仕上げてくれる薬剤も出てきました。
ですから、白髪染めでもおしゃれ染めのように明るめの仕上がりに近づけることができます。
7 ヘアマニキュアやカラートリートメントなどの染毛料(化粧品)とは
染毛料には人体に影響が少ないもの(副作用が少ないもの)を成分としているので、染毛剤に比べると、基本的にかぶれやアレルギーなどが起こりにくくなっています。
※全ての人にアレルギーが起こらないわけではないので、心配な方はパッチテストを実施することをおすすめします。
染毛剤がキューティクルを開かせて毛髪の内部に浸透するのに対して、染毛料は毛髪の表面で染毛します。
その分、染毛剤よりは染まり方が弱く、徐々に染まるなどの曖昧な表現しか使用できません。効果・効能があるという表記はできないのです。
ヘアマニキュア、ヘアカラートリートメントのほかに、カラーシャンプー、カラースプレーやヘアカラーマスカラなどの白髪隠しなどがこの分類になります。
7-1 ヘアマニキュアやカラートリートメントなどに含まれる成分
染毛料には、主に以下の成分が配合されています。
・HC染料・・・プラスもマイナスも持たず、ものすごく小さい染料なので、キューティクルが開いていなくても髪の表面内部に浸透していく。逆に外にも出ていきやすいとも言える。
・塩基性染料・・・プラスイオンを持つ染料で、髪の表面にあるマイナスイオンに付着する。トリートメント成分との相性も良く、また、皮膚に染まりにくい。
・酸性染料・・・マイナスイオンを持つ染料で、髪の表面にあるプラスイオンに付着する。塩基性染料よりも少量で染まりやすいが、トリートメント成分との相性が悪く、また、皮膚に染まりやすい。
7-2 ヘアマニキュアやカラートリートメントなどの染毛の仕組み
染毛料の種類によって配合されている成分、染毛の仕組みが変わってきます。
7-2-1 ヘアカラートリートメント・リンスの場合
HC染料と塩基性染料の両方が用いられ、その配合量はメーカーによって異なっています。
HC染料が髪の表面内部に浸透して染め、さらに塩基性染料が髪の表面のマイナスイオンに付着して染めます。
どちらもトリートメント成分と相性が良いので、カラートリートメント・リンスにはトリートメント成分が多めに入っています。つまり、髪に優しいということですね。
出典:メロスコスメティックス
7-2-2 カラーシャンプーの場合
塩基性染料と酸性染料の両方が用いられ、それぞれ髪の表面のプラスイオンやマイナスイオンに付着して染めます。
現在は、塩基性染料タイプが多く販売されています。
7-2-3 ヘアマニキュア・ポイントカラー
酸性染料を用いた染料で、髪の表面のプラスイオンに付着して染めます。
トリートメント成分と相性が良くないので、染毛料の中ではトリートメント効果が一番弱いと言えます。
出典:メロスコスメティックス
カラースプレーもこの部類になります。
7-3 染毛料によるメリット・デメリット
7-3-1 メリット
・使われている染料は公的機関により安全性が担保されていたり、国内化粧品安全性試験に基づく方法で安全性データが取得されており、髪や頭皮への負担が少なく、かぶれやアレルギーも起こりにくくなっています。
・髪へのダメージが少ないので、染毛料は毎日でも使用できます。
・徐々に染まっていくので、白髪であれば自然な感じで目立たなくすることができます。
・毎日使うことで伸びてきた髪(白髪)にもアプローチし続けるので、ヘアカラーに比べて伸びてきた髪との色の段差が目立ちません。
7-3-2 デメリット
・徐々に着色するのですぐに髪色が変わるという即効性はありません。
・シャンプーをする度に色が落ちていくので、何もしないと2~3週間で色落ちして元の髪色に戻ってしまいます。
・脱色をしないので、黒髪に使用してもほんのり色づく程度で、髪を明るくすることはできません。
染毛料は白髪染めやおしゃれ染めのヘアカラーほど即効性や持続性はありませんが、髪の傷みを気にする方には断然おすすめです。
頭皮や髪にダメージを与えると、より白髪が増える原因にもなるので、長い目でみて将来も黒黒した髪でいたいのであれば、染毛料の使用を検討してみてください。
>>カラートリートメントは白髪ケアにおすすめ~基本知識から使い方まで~
>>白髪隠しおすすめ13選!スティックやマスカラなど4種類の使いやすさを比較
8 比較表
染毛剤と染毛料のそれぞれのアイテムをわかりやすく表にまとめてみました。
おしゃれ染め | 白髪染め | ヘアカラートリートメント | ヘアマニキュア | |
薬機法の分類 | 医薬部外品 | 医薬部外品 | 化粧品 | 化粧品 |
髪のダメージ |
とても強い | 強い | ほとんどなし | ほとんどなし |
染まり具合 |
1回で濃く染まる | 1回で濃く染まる | 使う度に徐々に染まる | 使う度に徐々に染まる |
黒髪の染まり方 | 明るく染まる | しっかり染まる | 染まった色はほとんど見えない | 染まった色はほとんど見えない |
白髪の染まり方 | 明るく染まる | しっかり染まる | 徐々に染まる | 徐々に染まる |
ブリーチ力 | 強い | 普通 | なし | なし |
色持ち | 1~2カ月 | 1~2カ月 | 2~3週間 | 2~3週間 |
トリートメント効果 | 美容室:高い
市販:低い |
美容室:高い
市販:低い |
高い | 少ない |
9 まとめ
ひとくちに髪を染めると言っても、いろいろな染料があり、その効果や髪への影響などにそれぞれ特徴があることがお分かりいただけたでしょうか。
自分が何を目的として髪を染めたいのか、その後の髪への影響はどうなのかを考えて、ヘアカラーや白髪染め、ヘアマニキュアなどを選択し、納得して理想の髪色に近づけてください。