美容ライター
池内 恵美
化粧品メーカー勤務11年。前半は研究開発部門、後半は営業部門に所属。作り手と消費者の両者の立場でアドバイスします。
「シリコンは髪に良くない」と思っていませんか?ノンシリコンをうたうシャンプーやトリートメントが増えるなか、悪い成分のイメージがついているシリコンですが、実際には髪にどのような影響があり、なにが悪いのかをしっかり把握できているでしょうか。今回はそんなシリコンについて説明していきます。
Contents
1 シリコンとは
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シリコンとは酸素とケイ素、有機物からなる有機化合物のことです。光や熱に強い、柔軟性がある、通気性が良いなどのメリットがあり、安全な素材なので日用品や医療器具、調理器具など幅広く活用されています。人体に有害な物質はないので、ヘアケア商品をはじめスキンケア用品など多くの化粧品にも使われています。この場合、成分表示はシリコンではなく、『メチコン、シリル、シロキ、シラン』が表示の一部に含まれて表記されています。
2 シャンプーとトリートメントにおけるシリコンの働き
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なぜシリコンはシャンプーやトリートメントに入っているのでしょうか。それは使用感をアップさせるためです。実はシャンプーにシリコンが入っているケースはあまりなく、主にトリートメントやコンディショナーの方に多く配合されています。
●シャンプー・・・髪や頭皮を洗浄する役割で、洗浄するための成分が含まれている。
●コンディショナー、トリートメント・・・髪をコーディング、補修することが役割で、シリコンや補修成分が含まれている。
2-1 髪の指通りをよくする
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一昔前のシャンプーは洗い上がりにきしみが出ていました。それを改善したのがシリコンなのです。シリコンがキューティクルに付着しコーティングすることで、髪にツヤを出し、ツルツルした手触りに仕上げてくれるのです。
2-2 ドライヤーの熱から髪を守る
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髪がコーティングされることで、ドライヤーやヘアアイロンなどの熱から髪を守ってくれます。髪は熱に弱く、ドライヤーなどの熱もあてすぎると髪が乾燥してパサついてしまいますが、シリコンのコーティングが髪をガードしてくれるのです。
2-3 髪同士の摩擦を防ぐ
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髪は摩擦することでダメージを受けてしまいます。それは外部からの刺激によるものだけでなく、髪同士がこすれることでも起こります。シリコンによって髪がコーティングされているとこの摩擦を防ぎ、ダメージを抑えることができます。
3 シリコンシャンプー&トリートメントが避けられる4つの噂
髪にとって良い働きをしてくれるシリコンですが、なぜ悪いものとして避けられているのでしょうか。その理由を見ていきましょう。
3-1 毛穴が詰まるのは本当?
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よくすすいでいれば、シリコンが毛穴に入り込んだり、塞いでしまったりする心配はありません。
シリコンはキューティクルをコーティングします。その際に髪だけでなく毛穴にも付着、蓄積してしまい、毛穴を詰まらせてしまうと言われています。初期のシリコンシャンプーは質も良くなかったため、このようなデメリットもありました。しかし、近年ではシリコンも進化し、網目状の構造で分子も大きいので毛穴に入り込んだり、塞いでしまったりする心配はありません。最近のシャンプーでも毛穴が詰まると感じる場合には、シリコン自体が悪いのではなく、すすぎが十分に行えておらず、余分な成分が髪や頭皮に残っていることが原因だと考えられます。
3-2 パーマ、カラーが効かないのは本当?
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前述の通り、シリコンは網目状の構造をしており、薬剤が入る余地のないほど髪をコーティングしてしまうものではないのでパーマやカラーには大きな支障はないと言えます。「シリコンは髪をコーティングする」という言葉が独り歩きをして、「パーマやカラーなどの薬剤が髪の内部に浸透しづらく、効果が出にくい」と解釈されるようになったのでしょう。その証拠に美容師さんが使うプロ用シャンプーにはシリコンシャンプーの方が圧倒的に多いです。
3-3 髪にボリュームが出ないのは本当?
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ボリュームが出ないとわけではありません。高重合のシリコンがたくさんトリートメントなどを使用すると髪全体がしっとりと落ち着いた仕上がりになりますが、軽いシリコン配合のシャンプー・トリートメントではサラサラふわふわに仕上がります。
3-4 企業のプロモーションの影響?
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実はシリコンが悪いものという印象が定着したのには、企業のイメージ戦略が大きく影響しています。近年ではスカルプケアに力を入れた商品が増え、オーガニックや無添加などの髪や頭皮にやさしい健康志向なシャンプーが増えてきました。これらのシャンプーをアピールするには、今まで主流だったシリコンシャンプーとの差別化を図る必要があったのです。その結果、先に挙げたデメリットばかりがクローズアップされ、悪いものというイメージが広まってしまったのです。
4 シリコンシャンプー&トリートメントが向いている人
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シリコンは悪いものではないと聞くと、シリコンシャンプーとノンシリコンシャンプーどちらを選んだらよいのかわからなくなりますね。人それぞれ相性は異なりますので、髪質に合ったものを選ぶことが大切です。次に挙げる特徴に当てはまる方はシリコンシャンプー&トリートメントの方が合っていると言えます。
4-1 ダメージヘアの人
髪がパサついている、キューティクルがはがれているなどのダメージヘアにはシリコンシャンプー&トリートメントがおすすめです。傷んだ髪は指通りが悪く、乾燥してツヤもありません。シリコンによるコーティングがなくなってしまうとこの状態が前面に出てしまうので、髪の表面を整えてくれるシリコンシャンプー&トリートメントをおすすめします。
4-2 髪のボリュームを抑えたい人
髪が太く量が多いなど広がりやすい場合には、シリコンシャンプー&トリートメントの重めの洗い上がりが合っていると言えます。コーティングにより髪自体が重くなるので、広がりにくくなります。また、しっとりとした髪になりますので、まとまりやすくなります。
4-3 ドライヤーやヘアアイロンをよく使う人
シリコンは熱から髪を守ってくれる働きもするので、ドライヤーやヘアアイロンを使ってスタイリングする方にもおすすめです。髪は熱に弱いので頻繁にドライヤーやヘアアイロンを使っていると、乾燥して傷んでしまいます。シリコンのコーティングによってダメージを防いであげましょう。
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5 シリコンシャンプー&トリートメントの選び方
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ドラッグストアなどで購入できる市販のシャンプー&トリートメントの多くはシリコンが入っています。陳列棚を見てもたくさんの種類があるので、どれを選んだらよいのか迷ってしまいますね。一口にシリコンシャンプー&トリートメントといっても、良いものから髪や頭皮への負担の大きいものまでさまざまです。選ぶ際のポイントをしっかり押さえておきましょう。
5-1 シリコンが過剰配合されていないものを選ぶ
シリコン自体は悪いものではないのですが、過剰に配合されていると十分に洗い流すことができず髪に残ってしまいますので注意しましょう。シリコンが大量に入っているかは成分表示で判断することができます。
成分表示は配合されている量が多い順に記載されているので、シリコンの成分が上位に記載されていないものを選ぶとよいでしょう。成分表示にはシリコンではなく、『メチコン、シリル、シロキ、シラン』が表示の一部に含まれて表記されています。
5-2 洗浄力が強くないものを選ぶ
洗浄力が強い場合、髪はきしんでしまいます。それをカバーして手触りよく仕上げるためにたくさんのシリコンが必要になります。ラウリル硫酸、ラウレス硫酸などの硫酸系界面活性剤は特に洗浄力が強い成分なので、これらが配合されているものは避けてアミノ酸系シャンプーを選びましょう。
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6 髪と頭皮の洗い方
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良いシャンプーを選んでも洗い方が間違っていると髪や頭皮に負担をかけてしまいます。洗髪は正しい方法で行いましょう。
6-1 シャンプー前のブラッシング
入浴前にはブラッシングをして髪を整えます。汚れやほとりを落とし、髪の絡まりをほぐすことでシャンプーの泡立ちが良くなり、しっかり洗うことができます。
6-2 予洗い
シャンプー剤を使用する前に約38℃程度のぬるま湯で予洗いを行います。この予洗いを行うことで髪と頭皮のほとんどの汚れを落とすことができます。頭皮をマッサージするイメージで丁寧に洗いましょう。
6-3 泡で優しく洗う
シャンプー剤は手のひらでしっかり泡立ててから髪にのせましょう。泡で洗うことで髪や頭皮への刺激を軽減して汚れをしっかり落とすことができます。また、爪を立てて力強く洗うと頭皮を傷つけてしまいますので、指の腹で優しく洗うようにしましょう。
6-4 すすぎはしっかりと行う
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シャンプー剤の成分が髪に残ってしまうとシリコンがどんどん蓄積してしまいます。すすぎは丁寧に行いましょう。泡がなくなっただけでは十分ではありません。成分が髪や頭皮に残っていることがあります。泡で洗った3倍程度の時間を目安に丁寧にすすぎましょう。
6-5 コンディショナーやトリートメントは頭皮につけない
コンディショナーやトリートメントは髪を保護する役割があるため、シャンプーよりもシリコンが多く配合されている傾向があります。頭皮には塗布せず、髪だけにつけるようにしましょう。
7 まとめ
悪いものというイメージが定着しているシリコンですが、シリコン自体は害のあるものではありません。それだけでなく、髪にとって良い働きもしてくれています。シリコンシャンプー&トリートメントが合うのか合わないのか、それは人それぞれの髪質や好みによって違います。シリコンの特性をしっかり理解したうえで、自分に合ったシャンプー&トリートメントを見つけましょう。