
クリエイティブディレクター/ヘアドレッサー 松浦美穂さん
・PROFILE
1988年に渡米。90年に帰国後、ヘアサロンTWIGGY.をオープン。ミュージシャンの木村カエラさんや女優のりょうさん、宮沢りえさん、柴咲コウさん、モデルのラブリさんなど、個性豊かなプロフェッショナルから絶大な信頼を集める。サロンワークに加えて、ニューヨーク及びロンドンコレクションのバックステージの経験を経て、広告や雑誌、イベントやショーなどに活動の場を広げている。一昨年、TWIGGY.は25周年を迎え、サロンの拡張とともに3階にオーガニックメニューを提供するカフェ『TWIGGY. Café』をオープン。
お客様のライフスタイルを担う存在でありたい
常にトレンドを生み出しているヘアサロン。オーナーの松浦美穂さんと、長年のつきあいになるという顧客とのWEB上対談を実施。互いの個性を尊重するお2人に、新たなヘアとそのアレンジ方法について、ざっくばらんに話をしていただきました。
前回の記事はこちら>>【TWIGGY. 松浦美穂 Part1】豊かな知識 × アイデアで自らトレンドを生み出す
――トレンドセッターとして活躍してこられた松浦さん。近年はウルフスタイルに注目されているそうですが、今回モデルさんに作っていただいたスタイルは、どのようなコンセプトだったのでしょう?また、モデルの服部さん、新しいヘアスタイルはいかがですか?
松浦 80年代初期に流行ったラテンの女の子が原型のハイレイヤーのウルフスタイル。例えば、「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールズ。4、5年前に、どんなヘアスタイルがいいのかと考えていた時に、TWIGGY.としてウルフを押し出したんです。当時はみんなピンと来てなかったみたいだけど、その2年後にマークジェイコブズがファッションショーでウルフのウィッグをかぶらせたんです。よっしゃ、ようやくくるなって(笑)。服部さんは、それがとても似合うと思ったんですよ。
服部 私、これまでずっとボブだったんですけど、変えたい気分で。でもどう変えたいか具体的なアイデアもなかった時に、提案してもらったのが今のスタイルでした。私、母がフィリピン人で、今サンディエゴに住んでいて、アンニュイな日本人の部分の奥に、ラテン気質があると思うんですね。それで、太陽が似合う(ラテンな)感じにしてくださいって、よく分からないリクエストをしたんですよね。
松浦 いつもよく分からないリクエストですよね(笑)。でも、太陽って聞いて、じゃあこうしない?ってお互いの意見が合いました。例えば、ボブにしてくださいっていうお客様をそのままボブにする人を、私は美容師と呼びたくない。そうじゃなくて、じゃあどんなボブにするか。「なんでボブ? 毛先は薄くする?……」とお客様の言葉にならない思いを誘導できなきゃ。そんな美容師が増えたら、美容師はもちろん、お客様も共に素敵に成長できると思うんですよ。次はこんなテーマでどんなヘアスタイルができるんだろうって、互いがワクワクする。髪の毛という人の体の一部で遊べて、その上で、その人のライフスタイルの一端を担うことができる。こんな魅力的な仕事ってないと思うんですよ。
服部 私、お店に来ると、必ずいい意味で期待を裏切られるんです。ああ、予想していなかったことになったなと。でも、いつもワクワクした気分で帰ることができる。松浦さんと話していると、「こんなアレンジもできる」「あんなアレンジもいいね」と、提案してくれるから帰った後もいろんな自分になれるのもうれしいところです。今回提案していただいた髪型は、遊びやすいのもうれしい。それに、気分的にもすっきりして、無邪気な気持ちになれた感じがします。
松浦 やんちゃな部分と正統派な部分。その両面をもっている彼女の無邪気な部分が出て来た感じがしますね。彼女は今、住む場所や仕事を変えたばかり。さあ新しい人生が始まってどうしようという人生のプロセスの時期に、新しいパーマヘアがしっくりときたのかもしれないね。前回のインタビューで30代、40代こそパンキッシュに、というお話をしましたが、今までにないチャレンジをしてくれたから、これからの人生がポジティブになれるんじゃないかと期待しています。
――今回パーマを担当された森田さん、パーマはどのような特長がありますか?
森田 顔周りや襟足は大きめ、トップスは小さめと、大小さまざまなロットを使って巻き、動きのあるスタイルに仕上げました。トップ部分は細かいロットでしっかりと、顔周りや襟足は長さが出るように大きめのロットで巻くことで、縦長のウルフのシルエットがキレイに出るように考えました。
――全体にパーマをかけるスタイルは、大胆なイメージチェンジになりますね。ホームケアをする際のアドバイスはありますか?
30代以上の女性にとって、ツヤ感はとても大事です。とくに、全体に今回のような細かいパーマをかけると、どうしてもツヤが失われてしまいます。ツヤ感を補うためにおすすめしているのが、ムースとワックスの2つづかい。潤いとツヤのあるヘアをキープすることができます。
ユメドリーミング エピキュリアン ヘアムース 100ml ¥3500(写真左)
ウェーブヘアに適量を揉み込むと、ツヤとエッジが生まれる。
ユメドリーミング エピキュリアン ヘアワックス 80g ¥3600(写真右)
ボリュームを調節したり、ランダムなヘアスタイルを作ったりできるアレンジ力抜群のワックス。
――TWIGGY.では、カットリスト、パーマリスト、カラーリスト、ヘッドスパリストといった、それぞれのスペシャリストが施術を行われているのですね。
松浦 この体制には、3つのメリットがあると考えています。
1つ目は、1人ひとりのスタッフが、各々の分野の技術を深く掘り下げ、テクニックや考えを研鑽できるため、サービスを提供するお客様への満足度が高くなることです。
2つ目は、お客様とのなれ合いがなくなる点も。心地よい緊張感の中で、専門性の高い技術と知識を提供できます。
そして3つ目は、技術者が夢を叶えられること。これによって各スタッフが自信と誇りをもつようになります。このような雇用が増えると「夢」を追い続ける美容師が増えていくでしょう。そうなれば、お客様の満足度を満たす美容室が増えていくと思うんですよ。
(左)パーマを担当した ヘアスタイリスト・森田大介さん
(右)メイクを担当した ヘアスタイリスト&メイクアップ・成澤雪江さん
――先ほど、モデルさんがその日の気分に合わせてアレンジが自在だとおっしゃっていました。アレンジのバリエーションについてお聞かせください。
全体にパーマをかけたスタイルですが、ブロー次第でがらっとイメージを変えることも可能です。ストレートのスタイルは、ブローで伸ばして毛先を遊ばせ、フェミニンなスタイルに仕上げました。
その後、モデルさん自身に自由にアレンジしてもらったのは、前髪を上げて顔周りをタイトにし、リーゼント風にまとめたスタイルです。その日の気分で帽子をかぶってもいいし、ヘアバンドをしてもまとまりやすいですね。
女性って、時にはしっとりとした女性らしさを前面に出したい時もあれば、時にはぱーっと明るい気分の日もありますよね。毎日、ヘアスタイリストが隣にいるわけではありませんから、その日の気分で自分でアレンジしやすいスタイルを提案するのも、美容師の大切な役割だと思っています。
モデルさん着用ブランド:「MIHARA YASUHIRO」
【TWIGGY.】
東京都渋谷区新宮前3-35-7-001
TEL:03−6413–1590
月曜・木曜 10:00〜19:00
水曜・金曜 11:00〜20:00
土曜 11:00〜19:00
日曜・祝日 10:00〜18:00
定休日:火曜日
カメラ(スチール、動画)/大根大和
取材・文/宇治有美子